犬小説を一本。残暑見舞いで配布品として。一応。りんの一人称です。殺生丸が別人ぽいがこれがりんフィルターだから良いのです。
ふわふわ、さらさら。
知ってる。
とてもよく知ってる。
大好き。
これが、すごく好き。
目が覚めると一番最初に見えるのは真っ白。白が見えるの。それから銀色。お月さまの光。きらきら。曇っている日でも雨が降っている日でも、白と銀はまぶしいから私は目を細めちゃうんだ。勿論、晴れている日はとってもとってもまぶしい。だから一回は目を閉じちゃう。でもすぐに開く。また閉じる、開く。ぱちぱちばち。まぶたから音がする。そういう気がする。
「おあようございます」
目が覚めたばかりだと口がからからだからうまく話せない。舌が口の中のあっちこっちにひっつく感じがするよ。目が落ち着いてくると殺生丸さまが見える。私を包んでいたきらきらは全部殺生丸さま。私が起きたときだけは、なんでかな、殺生丸さまはちょっとだけ、ちょこっとだけだけど、笑ってるみたいに見えるの。
夏はきらきらまぶしいのがいっぱいだから私はいつもよりもたくさんぱちぱちしてしまう。殺生丸さまはやっぱり、ちょこっとだけ笑ってるみたい。気のせいかな?そうじゃないと良いなって思う。
「えへへ、暑いですねぇ」
本当は、そんなに暑くない。私がいた村よりも殺生丸さまと寝泊りする洞穴の方がずっと涼しいし、森なら木陰も沢山あるもの。でも私は暑いですね、って言ってしまう。そうすると殺生丸さまのひんやり冷たい指が私のおでこの汗をさっと払ってくれるから。何で殺生丸さまの指はいつも冷たいんだろう。ちょっと不思議だなぁと思う。
「殺生丸さまぁ」
「なんだ」
「殺生丸さまの指は、すごく冷たくて気持ち良いですね。羨ましいなあ」
「お前は違うのか」
「うん」
殺生丸さまがちょっと不思議そうな顔をしたから、私はほら、って言って手を出してみた。ちょっと汗をかいていて、ふくふく熱い。殺生丸さまは冷たい指で私の掌を撫でて、それでちょっと頷いた。へんなの、と私は思う。だって、殺生丸さまは私の手によく触るのに。どうして私の手が熱いってこと忘れちゃうんだろ。
でも、殺生丸さまに触ってもらうのが嬉しいから、私は笑っちゃう。えへへ、というと、やっぱり殺生丸さまのお口が少し緩んだ。嬉しいなあ、楽しいなあって思う。
殺生丸さまの後ろ側を見てみた。きらきら、光ってる。きらきら、きらきら。光が零れてくる。溢れ出す。太陽は元気で、外はきっと暑くなる。昼間、太陽が高いうちは川の中に入って遊ぶ。
着物は濡れちゃうから脱いでおくんだけど、長い間入っていると殺生丸さまがちょっと恐い顔になるから気をつけなくちゃいけない。人間は、長い間水に浸かっていると病気になるからだって。つまらない。
でも、たまにだけど殺生丸さまが一緒に遊んでくれる時がある。私の頭から、水をざあっていっぱい、いっぱいかけてくれるんだ。それはすごく楽しい。楽しい。嬉しい。気持ち良い。笑ってしまう。
「ねえ殺生丸さま、今日も川に行って良いですか」
「ああ」
「お水かけてくれますか」
「……ああ」
えへへへ、嬉しい。
外はきらきら。雨が降って涼しくなると川遊びは駄目になっちゃうから暑いままが良いなあ、と思う。殺生丸さまにお水をかけてもらうんだ。
日が少しずつ短くなって、あまり暑くならない日が増えてきたけど、このままずうっと暑ければ良いのに。きらきらがずうっと続けば良いのになあ。
「もうすぐ秋になっちゃいますね」
「嫌か」
「あのね、川に入るの大好きなんです。でもね、夏しかできないから」
「秋になればまた別の遊びができるだろう」
「別の?」
こういう時は殺生丸さまは答えてくれない。自分で考えないと行けないんだ。でも私はいっぱい楽しそうなことを思いついた。殺生丸さまの袖を借りて木の実をたくさん集めたいな。大きくて長いからきっとたくさん入るよ。それから、枯れ葉を積んでその上でお昼寝。綺麗な紅葉を集めたい。冬籠りの準備をするリスと追い掛けっこ。
殺生丸さまはどれくらい一緒に遊んでくれるかなあ。袖は貸してくれるかな。
「あのねえ、早く秋になると良いですね!」
「そうか」
殺生丸さまがまたちょっと笑った。嬉しいな、って思う。ふふ、と笑ってしまう。
早く秋になりますように!
了
残暑見舞い。九月頭くらいまでお持ち帰り自由報告義務なし。レイアウトデザイン改変自由に。携帯で小説は無理だ。
posted by こがよしひさ at 13:58|
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犬夜叉
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